私の書きたい女性
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
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(例)[#地付き]〔一九四九年七月〕
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こんにち、わたしたちが生きている社会は複雑で、毎日の生活もはげしく変化しています。
文学の作品、とくに小説には風俗描写のおもしろみというものもあって、戦後にあらわれている多くの小説の中の女性は、若いひとを扱ったにしろ、中年から老年の女を描くにしろ、大部分がその風俗小説的な角度であつかわれていることは、どなたもお気づきのとおりです。
戦争がもたらした社会生活の大破壊のために、どんなつつましい内気なひとも、女として人生に予想していなかった変動をうけています。その変動に対して、どう処してゆくかということも現実には決して簡単でありません。
風俗小説の範囲で現実を見るだけでも、女の社会的な動きの一方には、婦人の参議院議員からはじまって少女歌劇の女優、婦人作家をふくむ女重役というものがあらわれているし、兜町・堂島に、女の相場がはやって来ています。その一方では、民主的な日本の新しくすがすがしい生活建設をめざして美しく雄
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