々しく、恋愛し、結婚して行きたいと願う若い女性の大群が、実際生活のなかに本当の男女同権が確立するように働く人民としての女性の独立が可能である条件を作ろうとして奮闘しています。
 風俗小説、女に映り女によって表現されるさまざまの世相をそれなり面白く描写してゆきます。けれども、わたし達がこんにち生きる心の底には、色さまざまのネオンがいろんな角度から空に反射しているような女の世相を見るだけでは満足しない何かの思いが貫いているのではないでしょうか。
 いろんな思いをし、いろんな目にあって生きてゆく。人間の一生はただそれっきりのものなのだろうか。この疑いは、とくに、いまの日本の女の心にはげしく息づいています。女をしばる封建の道徳から自分をときはなして、新鮮で豊かな、ヒューマニズムを実感して生きてみたい。理屈の判断から社会悪に抵抗しているだけでなく、一歩その前へ出て、よりましな人生をたたかっているという、人生創造のよろこびと確信とを求めようとしている女性の精神こそ、現代のテーマだと思います。情感そのものの内容が著しく社会的に、また理性的になって来ていて、しらずしらずのうちに、思想を感情そのものとし
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