の勇士に対する憧憬、特攻隊の讚美の方向へと追いよせられた。女性のやさしさは、支配者によって、彼女たちの愛してやまぬ男たちを殺す刀に付ける虚偽の飾りとして利用されたのであった。キリストは神の名において戦争を合理化し熱心なキリスト教徒の女が、恥なく人間同士の殺戮に熱中した言葉を与えた。そのとおりに、日本の、「雄々しい女心」は、人民の破滅の方向へと、総て動員されて行ったのであった。小説から、和歌から、ふと眼に入るグラフまで、戦争を讚美しないものがあったろうか。今日になれば、それは全く嘘とわかった「皇軍の勝利」を描き出さないものがあったろうか。
 こうして、現実の敗北と架空な戦勝との不思議な絡《まと》い合せのまま時が経つうちに、その矛盾の間から、深刻な社会問題が生れて来た。大河内一男教授が帝大新聞に青少年の犯罪の増加について書かれたことがあった。国民学校の上級生から中学、専門学校に至るまで、学徒は動員されて工場に働いていたのであるけれども、不規律な工場の労働と、青少年の正しい娯楽設備のない社会の実情とは、急に金を持つようになった青少年達の生活を、決して健全にゆたかにすることは出来なかった。その
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