うか。
民法は一八九六年(明治二十九年)四月、日清戦争後一年に制定された。刑法は一九〇七―一九一二年(明治四十年―四十五年)の間に、日露戦争後二年から着手された。
民法における婦人の立場というものは、はっきりと文部省の教育方針を照り合せ、しかも最もその消極的な害悪の多い面を照返している。例えば第十四条から第十九条に至る妻の無能力ということに関する条項、第八百一条から第八百四条に至る財産に対する妻の無権利、第八百十三条の離婚についての不平等な規定、第八百八十六条から第八百八十七条に至る親権において母の権利の制限されていること、第九百七十条その他相続或は遺産に対する婦人の差別的な規定、或は結婚届の規定の中にある婦人に不利な内縁関係の規定など、今日婦人の社会的不便を来している幾多の条項がある。婦人は、未成年時代には勿論、総てのことを親の権利によって支配されている。法律上の成年(二十歳)になって、やっと婦人も民法上一人前の能力者になる。と思うと、現在のような結婚難の時代でなければ、それらの若い婦人達は、あらましその前後の年齢で結婚して家庭に入る。妻となった若い婦人たちは、忽ち民法上能力を喪
前へ
次へ
全111ページ中34ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング