。大金持の夫であろうか。それとも無類に美しい容貌の夫であろうか。或はやさしく真実な騎士の愛情であろうか。とつおいつしながらまた別の森に来かかった。すると樹の間から赤い着物を着て、恐ろしい顔をした一人の女が出て来た。そしてガラハートに呼びかけた。
「ガラハートよ。あなたはなぜそんなに沈んだ顔をしていますか、日頃の雄々しいあなたにも似合わない」
 ガラハートは親切な言葉を感謝して、自分のぶつかっている困難を打ち明けた。
「どうも困りました。いくら考えても私には見当がつかない。若しお智慧を拝借出来たら大変仕合せです」
 すると、赤い着物の恐ろしい女は答えた。
「心配なさらないでようございますよガラハート、私はあなたの武勇を崇拝しているから、答を与えて上げましょう。女がこの世で一番欲しいと思っているものは『独立』です」
 そういって女の姿は消えた。
 日限が来た時ガラハートは勇んで例の森へ出かけた。巨人は恐ろしい武器をひっさげて待ち構えている。破鐘のような声を出して呼びかけた。
「やい、ガラハート、難題はどうした。とても返事は出来なかろう。お前の命も今日きりだぞ」
 ガラハートは落着いて「まあ
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