講和問題について
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)生命《いのち》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)開拓移民|哈達河《ハダホ》開拓団二千名の人々が、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九五〇年一月〕
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 二、三日前の新聞に、北満の開拓移民|哈達河《ハダホ》開拓団二千名の人々が、敗戦と同時に日本へ引揚げて来る途中、反乱した満州国軍の兵に追撃され、四百数十名の婦女子が、家族の内の男たちの手にかかって自決させられたという記事がありました。
 その時六、七名から十二名におよぶ女子供を銃殺した人達が復員しているという記事が問題となっていました。その中の一人である教員が、もしあの当時、“降伏”という言葉が日本にあったならば、ああいうことを誰がしたろうと語っていました。
 日本の講和問題というと、それは政府の仕事で、私たち女などが発言する場所でないように思う習慣があるけれども、この恐ろしい悲しい実話一つを考えてみても、日本の婦人こそ平和について最も発言権の多い人々であることがわか
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