ります。
このあいだ朝日新聞が講和問題についてアンケートを集めたとき「単独講和でいいから、そして軍事同盟の条件がついてもよいから早いほどよい」と答えたのはおもに実業家でした。学者、作家、その他の人々は、「どうせ政府が宣伝しているように手ッとり早いことはできないのだから、日本の幸福のために、世界に日本の良心を示すために、平和がたしかに守れる条件をそなえた全面講和と絶対的な武装放棄を主張すべきである」と答えていました。
帝国主義の世界では、まだまだ戦争でもうける者があります。そのために景気がよくなるとか、失業が救われるとか、日本の地位が高くなるとか、戦争挑発を行います。
昔から、落城の時、まっ先に殺されたのは子供と女でした。現代の科学兵器で銃後というものはありません。この小さい海に囲まれた人口の多い日本が、万一超威力の近代戦にまき込まれたとしたら、どこによわい女、子供の安全な場所があるでしょう。
講和は私たちの生命《いのち》の問題です。[#地付き]〔一九五〇年一月〕
底本:「宮本百合子全集 第十六巻」新日本出版社
1980(昭和55)年6月20日初版発行
1986
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