については非常にものわかりのよい人間にならなければ、私共の幸福なんてものは参りません。なぜかといえば、幸福というものは他人のつくるものではありません。どんな闇市場に行っても幸福は決して売っておりません。自分達がつくらなければならないのです。だから幸福な状態が私共の一生のうちにできるようにするには、やはりそれにふさわしいだけの準備がなければならぬ、それにふさわしいだけの判断がなければならぬ。だからどうぞ皆さんも御自分の生活を見る眼はするどくあるように、そうすれば自らどういう風にしなければならないかということはわかるわけです。こういうことは選挙一つの問題ではございません。何も選挙をどうする、こうするという目さきのことでがたがたいっていることもないのです。私の一生は短かいけれども、あなた方の一生はずいぶん長い。まだ三分の一なのですから、大いに希望をもって賢くならなければ駄目です。つまりあなた方の一生は私共の一生の及びもつかないような生活をしなければつまらないと思います。私のお話はこれで終ります。[#地付き]〔一九四六年四月〕



底本:「宮本百合子全集 第十五巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年5月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
   1952(昭和27)年1月発行
初出:婦人民主クラブ主催講演会の速記原稿
   1946(昭和21)年4月8日
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年6月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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