自分の娘達の生涯というものも考えてみれば、あまり可哀想だ。娘達も美しい可愛い娘達だから、大きくなれば自分と同じような人生を送るだろう。自分はそれを防いでやる力はない。だから自分と娘達は自分達の愛情をもっているところで死にます、といって何度も何度も迎えが参りましてもそれを断って、とうとうその三人の娘を刺殺し自分も自害したという話があります。これは名前を申上げたら皆さんよくおわかりになるだろうと思いますけれども、私はずいぶん古く読んだので今思い出せないのですが、そういう女の人の不幸の生活があります。そういう人達はたくさんの召使の女の人にかしずかれて手取り足取りされて、自分の帯を結ぶことも髪をゆう必要もない生活をいたしましたけれども、人間らしさはそのように無視されてきたわけです。
ところが明治の日本になりましてから、いろいろの点で生活がかわって参りました。たとえば法律というものができました。昔の封建時代は殿様が絶対的の権力をもっておりましたから、自分の臣下に対して生殺与奪の権があった。生かそうと殺そうと殿様のお気儘という状態なのです。ですからちょっと気に入らなければ、お小姓が茶碗を割ったと
前へ
次へ
全32ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング