いって首を斬られますし、お菊みたいにお皿が割れたといってお化けになるほどいじめて殺されるほどの目にもあわなければならなかったけれども、明治の世にいくらか近代の国家になりましてから、とにかく法律というものができました。民法とか刑法とか商業に関する法律とかいろいろの法律がたくさん出ました。そして法律によって治められる国ということになりました。ところが明治時代から今日までにできた日本の憲法、民法、刑法その他のものを見ました時に、先程もいろいろの方がお話になっておりました通り、それは法律の恰好はしていても非常に変てこなのです。たとえば繰返し繰返しいわれているように、女の人が一人前になって結婚すれば一家の主婦ですから、今までの娘さんよりもっと責任がある筈なのですけれども、とたんに無能力になってしまう。つまりとたんに一人前でなくなってしまう。現実の生活と正反対なのです。そして分別のある立派な人が分別のないものとして財産を処理することも借金することも何にもできなくなってしまいます。それはたいへん不思議なものです。民法という大へん進歩的なようなものがあって、人民はどれだけの権利がある、どれだけのことを
前へ 次へ
全32ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング