の身分で申しますと、領主というものが絶対の権力をもっていた。日本では殿様がうんと権力をもっていた。その次にはその土地における地頭とか名主とかいうものが権力をもっております。お百姓さん達はそれに絶対に服従していたのです。そして女の人の封建時代の立場と申しますものはどういうものかといえば、それは全く男の人の言うなりであった。いうなりと申します以上に、男の人の便宜のための生物であったのです。だから結婚などと申しましても、何も女の幸福ということが眼目ではございませんで、昔からたくさんあるいろいろなお話をお読みになってもわかる通りに、戦国時代の女の人と申しますのは、父や兄という人達が戦略上自分が一番喧嘩しそうな敵へ人質として自分の妹や娘をくれるのであります。そして一時講和条約の人質にしたわけです。そういうようにして結婚させられました女の人がどんな生涯を送ったかと申しますれば、幸にしてそこで無事に子供をもって一生終ればよかったけれども、なかには自分の実家の兄弟と夫の家族とがまた再び戦さを起した時には、その女の人達は自分の家族の血統のものだから、生んだ子を捨てて実家の方に引取られる。或はまたそれに満
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