、今日のような恐ろしい物価のなかで、家庭に帰るといっても、一つの戸棚をあければ食べるものがぞろぞろ出てくる魔法のようなものをもっていらっしゃるなら別ですが、そういうものは世の中にないと思います。ところが半封建的な日本では婦人は表面では勘定しない。もちろん労働力としては勘定する。明治の紡績とか戦争の間にも女はどんどん働かされましたけれども、失業の時には勘定しておりません。けれどもブルジョア民主主義、つまり資本主義民主国では、やはり女の失業も失業者の数のなかに入れております。婦人が失業したら母性の痛められ方が男性よりひどい。男は土方をしても労働できるけれども、女の人は売笑婦になる。そういう道徳的頽廃を起すから女の失業者の問題を解決しなければならないけれども、社会的解決は資本主義的民主主義ではできません。だからある点ではこれらの民主主義社会は、すべてのものの幸福のためにつくられた社会であるといわれているけれども、その内部では働かすものと働かされるもの、婦人と男子の間には、幸福と不幸の開きが決定的にあるわけです。
今日の地球の面では、面白いことにはそのような矛盾を何とかして解決しなければなら
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