ども実際に受取っているものは時間にすれば五時間で、あとの五時間でできる生産物は、五時間分の月給のなかから見れば恐らく百倍も千倍もの価値のあるものをつくっているわけです。ですからブルジョア民主主義という段階においての社会では、みな選挙権をもっておりますし、婦人も公民権をもっておりますし、民法と刑法において日本のような婦人の無能力を現わされておりません。しかしやはり生活の根本にあるそういう矛盾のために、アメリカなどではやはり失業の問題が非常に多うございます。失業者はもう非常に多い数になっております。日本では失業を数える時には男子の失業だけ数えるのでありまして、つい先だって五百八十三万といっておりました。そして二、三日前には数ヵ月のうちにそれがうんとふえるだろうと書いてありました。ところがあのなかに婦人の失業者は入れてない。なぜかといえば、政府は婦人の失業者は家庭に帰るからといっているでしょう。だけれども、家庭というのはどこにあるのか、誰がつくった家庭がどこにあるのか。もし今日私達に家庭というものがあるならば、私達が自分達の努力できずいてもってきた家庭があるだけであって、私共は一文の金もなく
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