のですから、人間がこれまで生きて参りました歴史などは、もちろん私共の幸福のために使えるものでありますし、またいわば歴史そのものが人間がどういうように幸福に生きようかと努力して参りましたその足跡なのです。今日、民主主義とかいろいろなことが申されておりますけれども、私共は何しろお互い様にこの五ヵ月ほど前には、見ざる、言わざる、聞かざるででくの坊になって暮していたのです。ですから急に何でもいってよいということにもなり、また同時に自分達の責任をもって行動しろというようなことをいわれます。差当ってこの一票というものを私共はどういう風に使うかという問題さえ起ってきておりますが、急に寝ているところを起されたようなものでございますから、考えていることはもちろんあるのです、わかっている筈のことはたくさんございます。だけれども何だかそこが痺れたみたいで、うまく急に活動できにくいような気分があるわけです。だから婦人民主クラブのようなところでは、だんだん長い間にゆっくりとみなが成長して参りますために、しっかりした足どりで自分達の生活を建設できるために、みながより集まってやってゆこうとするところですから、性急に
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