く理解していたということがわかります。
昔の男の人たちにも、洞察力の鋭い人があったということが、この物語でよくわかります。と同時に、今日、言論の自由とか、男女平等とか申しておりますが、日本のどこででも、やっぱりまだ巨人がいったように、女が本当に求めているのは、独立だ、ということを理解しない人が沢山あるように見受けます。
最近の芝居で「人形の家」をやっておりますが、あの主人公のノラは、いままで夫に玩具にされていたということが不満であり、どうかして、玩具の生活から逃れたいといって、家出をする。あのノラの問題に残されているものは家を出てから、どんな生活を、ノラは樹てていったかということです。
ところで、今日、あのノラの芝居を御覧になる方は、自分たちの問題として見ないで、ある時代にあった一つの例だという風に、女が解決して行きたい一つの与えられた問題だというように、歴史を振返えるものとして、御覧になったとおもうのです。
ですから、ノラの芝居が――せんだって私も見にまいったのですが――上演されました意味は、未来に向って、課題を与えるというより、われわれが、今日いろいろの現実の問題を解決して
前へ
次へ
全19ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング