行かなければならない幸福の鍵を――ノラは何も持たずに家を飛び出している。――私たちは飛び出すなら飛び出す、飛び出さないなら飛び出さないように――幸福というものを、本当のものにする鍵を持たなければならない。そういう感じをはっきりあれを見たことによって受けるのであります。そして、時代の違いのあるノラの問題だ、と理解なさっただろうと思います。決してわれわれの今日の問題であるというふうにはお感じにならなかっただろうと思います。
ノラはああいうふうにした。しかし、私たちはこういうふうにもって行く。今日あれをみたとき、私たちの生活には、ノラの生活にはなかった自分たちを幸福にする鍵があるということをお考えになったと、おもうのであります。
けれども、今日の私たちの生活は、なかなか、楽なものではないのであります。余程私たちは頭を使って、自分というものを考え、幸福になるように研究して、実現して行かなければならないのです。幸福というもののはっきりした観念と、その建設というものは、人間だけがもつ一つの力なのです。そういうことから考えていって、今日の私たちの生活をめぐる問題をよく見てみましょう。
例えば、
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