なに、しょげていらっしゃるのです」と尋ねた。そこで、巨人の難題のために困っていることを申しますと、その女の人は「女が何を求めているかということは、ちょっと男の人にはわからないでしょう。しかし、あなたは大変正直だから私が教えてあげましょう。女がこの世の中で一番求めているのは独立です」と言った。期限が来て、巨人にこの答えを申しますと、巨人は非常に驚いて「人間の男にそういうことがわかろう筈がない。これは一番の根本問題で、人間の男に、女が求めているのが独立であるということがわかるはずがない。きっと誰かに教わっただろう」と言いました。騎士は正直な人間でございますから、赤い着物を着た女の人のことを申しました。これはこの巨人の妹であったのです。
この話は、今日私たちが聞きましても面白いもので、これは十三世紀頃、いまから八百年も前に出来た話であります。
賢明な男の人は、女が一番求めているのは、独立であって、しかも女自身では、表現することが出来ない、自分がいま求めているものは何であるか、ということを、自分の問題として、はっきり世の中に訴える力、実行して解決して行く力をもっていない、その気風を非常によ
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