本屋かと申しますと、軍や何かに引掛りがあって、終戦のどさくさに、ちょろまかした紙を持っている人達なのであります。
そうすると、公平にみまして、本が出せるということは、誰にでも出来ることではないのです。やっぱりモラトリアムになっても、困らない者は困らないというのと同じことであります。
政治というと、何か議論めかして、各政党の立会演説をするのが政治のようにおもわれますが、そうではなく、私たちの毎日の生活のなかに問題があるのであって、その問題を解決してゆくのが、政治なのであります。
私は社会のために、廉い本を作りたいとおもうのです。自分は儲けようなどとおもっていません。印刷する職工さんによくしなければならないし、いろいろの事情から紙がない。又公定賃金では製本もなかなか出来ない。どうしても作って行こうとすると、高い本しか出来ないようになっているのです。こういう文化的のことは、政治とはちょっと関係がないようなことであるけれど、はっきり、いまの社会の経済問題、政治の問題というものと結びついているのです。
みなさんが、今日お集りになったのは、おそらく、このような政治の話を聴きに来たのではない
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