でしょう。映画を見たい。それからすこしは文化的な話も聴きたい。そういうお気持でいらっしゃったのだとおもいます。私たちの文化的な希望というものは、今日のような破綻を来たしている社会のなかでは、みたされない。ですから、そういう問題をどう解決すればよいかといえば、私たちは、屋根から雨が漏ってまいりましたときには慌ててバケツを持って来て雨を受けます。そして、お天気になりましたら、自分たちの手で、屋根にトタンなどを当てます。こうして、自分自身の力で、切り拓いて行かねばならないわけです。
 もうすこし、働いて生きて行くということを、人間の値打を美しく、この世に咲かせるように、みんなで協力して、切り拓いて行かねばならないと、痛切に考えるのであります。

 私たちは女でございますけれども、男に脅かされるようにして生きてゆきたくはない。伸び伸びと何者も恐れることはなく、自分の力をもって生きて行かなければならないのであります。ですから、みなさんも、さきほどから、いろいろと纏らない話をお聴きになっていらっしゃいますけれども、幸福に生きたい、という希望があるならば、まだ咲かない幸福の希望という花の蕾があるなら
前へ 次へ
全19ページ中18ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング