る、働いて行く能力というものは、認められてはいないのです。ですから、こんど男子のように代議士に女がなったとしても、それだけでは「男女は平等なり」ではないのです。平等、平等といっても、言葉のうえの遊びではないのであります。
憲法のなかで、平等ということがいわれていますけれども、現実に、同じ仕事を、同じ量した労働者には、同じ賃金を支払わねば、ちっとも平等でないわけで、こうした、労働の第一の根本問題があれでは、はっきりされておりません。
また、あそこには、人は働く権利をもっている、と、はっきり、明文化してございますけれども、そうしますと、女と男とが、同じ権利をもって、同じ条件で働かねばならない。しかし、女の人は、母親になるという特性をもっていますから、その母性は保護されなければなりません。また、働いていた人が年をとって、働けなくなった時に、社会がそれを保護してやらなければなりません。
本当に、働く権利をもつということの内容には、こうしたいろいろな条件が備わって、はじめて、確立されるものであるにもかかわらず、あの憲法のなかには、一つも出ていないわけであります。ですから、文章の上でみますと
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