価というものはありません。省線の切符が三倍になりましたが、私は女ですからこれだけしか払いませんよ、といっても通用しないのであります。
また、学生生活をなさっていらっしゃる方は、百五十円しか貰えない。百五十円では、外食するとしたら、学資が出ませんでしょう。学生の生活というものは、働いている人々の生活と、かけ離れたものであると、いままではおもわれておりましたが、いまでは、働いている人の生活問題と、学生の生活問題とは、がっちり結びついています。また、家庭の主婦の生活、台所の食糧の問題は、直接外で働く男の生活問題と結びついているのです。
今日の社会の問題と申しますのは、私はこういう立場だから、こういうことは知らなくてもいい、私はなんとか楽にやって行けるから、そんなことはどうでもいい、ということは言えないのです。
こんどの憲法草案を、そういう立場から考えますと、私たちにとって非常に重大な関係があることがわかってまいります。
憲法というものは、決して、大理石に刻みつけて、何かの記念品のように、土の中に埋めてしまうものではないのです。生きている私たちの皮膚のうえに書かれる、そして、私たちと一
前へ
次へ
全19ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング