アムの決定によって、五人家族を標準に、五百円生活をしろということに規準が置かれたのですが、この五人家族というのは、なぜこんなふうに標準をたてたかと申しますと、日本の一軒の家の子供の統計は、年々殖えておりますが、多いところもあるでしょうし、少ないところもあるので、まあ三人ならいいだろうということで、家族全部で五人、五百円で暮せ、ということになったのだそうです。そして、あとはみんな封鎖されてしまったわけですが、しかし、おじいさん、おばあさんの二人がいらっしゃる家庭では、この二人はなんで生きて行くのでしょう。おじいさんたちの生活資金はありませんからね、などという人がありますでしょうか、しかし、この五百円生活だと、二人はみ出ていることになる。おじいさん、おばあさんは何で生きて行くのでしょう。政府が決めた、生きて行けという総計だと、ずいぶんおかしな話になるのです。
また、モラトリアムに伴って、いろいろな制限が行われることになりまして、女の月給というものは、男子の三分の一、二百円の月給として、政府は発表しました。これだと、つまり、男の三分の一で生きて行け、ということになりますが、しかし女だけの物
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