るが、それは忽ち、そうなら「とても昼のうちからあんなにまっしろ白粉塗っちゃいまいもの」という推論に入っている。そして「ここは東京の女のむだ花ばかりが咲くところ!」という結びで文章は終っているのである。
私はその文章を読み、※[#「火+華」、第3水準1−87−62]子女史の写真を眺めて、日日の記者は何たる皮肉家であろうと思った。昼間の私娼窟の人気ない軒合いを、立派な毛皮の長襟巻を膝の下まで重げに垂れ、さながら渡御の姿で両手を前に品よく重ねた※[#「火+華」、第3水準1−87−62]子女史が、自分の正面に向けられたカメラだけを意識してしずしず草履を運んでやって来る。そこがカチリと印画になって納められているのである。女史はそのまま諷刺画ともなるこの自身の写真を如何なる感想で見られたであろうか。更に、ともかく無産政党に属して一旗あげんとした良人宮崎龍介氏は、それを如何に見たであろうか。
「女には全く用のない玉の井」というのは女が私娼を買わないからの意味であろうが、深刻な東北地方の娘地獄の問題も、東京の夥しい失業女工の飢のことも、女には珍しい玉の井参観一巡中、※[#「火+華」、第3水準1−87
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