とで、そのような悪童的な放浪の道はたまたま赤軍の装甲列車にぶつかり、そこで汽鑵《かま》たき助手などやることがあったりした。そのサーニが、臓品分配のことから刃傷沙汰を起し、半殺しの目にあってシベリアの雪の中に倒れていたところを、その地元の「嘗て浮浪児たりし人々のコンムーナ」すなわち少年労働訓練所に救護された。サーニが到頭、自身を卓抜な青年労働者にたたき上げる迄の過程に描かれているその「白い大理石の家」の内での生活は、特に老パルチザンである指導者アントーヌィッチの洞察と生活の意義に対する目標の確固不抜性、人生に対する愛と評価との態度は作者の心に湧いている生きることのよろこびとともに鳴って描かれている。後篇の前半を占めるこの部分は地球の到るところで、分散させられながらよりよく生きようとして力をつくしているすべての人間の目に、希望とよろこびの涙を浮ばしめるのである。
観察力のすぐれた読者は、そして皮肉が人生に何事かを決すると思い違いをしている種類の人は、あるいはいうであろう。「新しき塩」が描かれている社会的背景、条件はソヴェトとは全く違う。不良児と浮浪児とはある点で違ったものであるし、まして
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