作家への新風
――著作家組合にふれて――
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四六年六月〕
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封鎖で原稿料を払うということは、これから作品をかいてゆく人のために、ますます条件がわるい、新しい作家、新しい日本の文学は生れにくい、ということである。今日、出版は、大部分が営利に立っている。営利の目やすから、荷風のところへ、封鎖ですが、と長篇をたのむ玄人はいない。
それこれ考えていたらば、この間、労働科学研究所から、一枚のアンケートが送られて来た。それは珍しい作家の労働調査のアンケートである。
その中に創作活動を有利にする社会施設のようなものはいらないか。営利出版と作家自身の出版と国家による出版といずれをとるか。そして、最後の項に、著作家の組合は入用と思うか、という問いが出ている。
戦争中の日本の文化殺戮の実状や、日本の文化人が歴史的に自主性を欠いていることについての反省は、日本の近代史の見直しと共に真摯な課題となって来ている。日本の作家のおくれている状態は市民精神に於ておくれた
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