作家に語りかける言葉
――『現代文学論』にふれて――
宮本百合子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)喫驚《びっくり》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)作者[#「作者」に傍点]と
−−
窪川鶴次郎さんの『現代文学論』の、尨大な一冊を読み進んでゆくうちに、特別感興をそそられたことがある。それは、論ぜられているそのことが、論として読者である私を承服させるというばかりでなく、一つ一つと読み深めてゆくにつれて私のなかの作家としての心が目醒され、ヒントをうけ、身じろぎを始めて文学への情愛を一層しみじみと抱き直すような感情におかれた点である。
このことは、六百六十一頁もあるこの文学論集を貫く一つの特別な味であると思う。そして、この著者が『文芸』二月号に書いている「私の批評家的生い立ち」と合わせて、私は永年の友達であるこの著者の人柄や心持ちなどの真髄を、あらためて印象のうちに纏められたような心持がした。
いきなり人について云いはじめるのは妙なようだけれども、先頃『現代文学論』の評として書かれた或る文章のなかに、窪川という人は、ひとが皆
次へ
全17ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング