歳月
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)とげ[#「とげ」に傍点]のような存在となってしまった。
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わたしたちの時代には、学校がそこにあった関係から、お茶の水と呼んでいた附属高女の専攻科の方が見えて、雑誌に何かかくようにと云われた。いまその原稿をかきはじめている、わたしの心持には複雑ないろいろの思いがある。そして、そういう思いは、わたしと同級生であった誰彼のひとたちが、もしその雑誌をよむとしたら、やっぱり同じように感じる思いではなかろうかと思う。なぜなら、随分久しい間、わたしは、自分が少女時代の五年間を暮した学校と縁がきれていた。ざっと十年以上。縁がきれたことには、わたしの方からでない理由の方が大きく作用していた。
わたしは、女学校を卒業してじき、文学の仕事をしはじめた。自分の生活についていろいろ考えてゆくと、やはり女学校時代の若い心情に蒙ったさまざまの感銘が思いかえされ、そこに、人間として苦しかった折々のあったことを忘れかねた。一九一一年(明治四四年)から一六年にかけての女学校生活には、現代の
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