な関係があったことがイギリス議会で発見されている。ウォール街の実業家たちと宴会の席上で終始一貫反ユダヤ熱をあげて、プロテスタント機関紙『チャーチマン』に警告されている。また、アメリカ聖教会機関紙『ウイットネス』は、MRAの労資協調論を批評して「美くしい宗教言辞のかげでMRAはなぜ世界最大の財団デュ・ポンの恩寵をうけねばならないのか」と急所をついている。
ジェスチュアでない世界平和と民主的社会の建設のために誠実な努力をつづけている世界のすべての人がMRAの本体を見きわめているこんにち、片山哲氏が大財閥の三井一門とコーでもてなされて「MRAの機動部隊を日本に派遣されたい」と切望しているのは、チルチル、ミチルの旅にしては人民に対する罪がふかすぎる。吉田内閣は、「青い鳥」だの「神霊に感じた民主主義」だのとMRAをかついでうろつくまでもなく、もう怠りなくリ・アーマメント=再武装は実行している。国内に五十万の顎紐をかけた警官と二百万の「消防」、復員軍人、旧戦犯、悪質の「民同」がうようよしていて、「高度武装」たる計画的な犯罪の挑発、捏造事件で人民の民主化を抑圧するために活躍している。
世界の民主主義者、良心ある人々が、国際ファシズムの一つの動きとして、MRAを批判していることは全く正しい。もし真実の道徳再建であるならば、今日世界の到るところで、日本の人民はじめ多くの民族が植民地政策と従属的な搾取から脱しようとしてけなげに闘っている歴史的、人類的意味が正直に理解されるべきである。中国の人民が泥と血の中から立ち上って安定ある民主社会を建設しようと未曾有の奮闘をつづけているその切実な努力を妨害するな、という世界の声の道徳的価値が理解されるはずである。[#地付き]〔一九五一年一月〕
底本:「宮本百合子全集 第十六巻」新日本出版社
1980(昭和55)年6月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
1952(昭和27)年1月発行
初出:「平和をわれらに」宮本百合子文庫、岩崎書店
1951(昭和26)年1月発行
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月14日作成
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