再版について(『私たちの建設』)
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四七年十二月〕
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この本にたいする要求は、第一版のでた一九四六年の春から後、一般にたかまっていた。新しく社会生活の面を多様に積極にされた婦人のために、この本のもっている範囲では役に立つところもあったためだった。
用紙の関係で、再版がおくれた。その二年ちかくに、私たちの現実は実にひどくかわった。生活の困難は益々おびただしく、いまでは国民所得の七割が税になって、不安定も底をついたと云っていいほどだし、六・三制の予算は、僅か七億にきりちぢめられた。闇買いをしないために営養失調から死んだ判事の問題が新聞に報じられているし「葦折れぬ」という一冊の本は、闇買いをわるいこととして絶対にそれをしないで病死した一人の若い女教師の手記である。クリスチャンということをこの頃強調する片山首相夫人は、営養失調で死んだ判事の事件に対して新聞記者のインタービューに答え「そこは奥様が少しなんとかね」と語っている。首相宅では闇買いはちっともし
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