いとわかったとき、わたしたちのすることは、たった一つしかのこっておりません。それは、待っていても当のない幸福なんか待たずに、どんな小さいものでも、自分たちでつくり出してゆけるよりよいもの[#「よりよいもの」に傍点]を確実に実現してゆこうとする決心です。

 ことしこそ、婦人の生活のあらゆる場面で、この決心が新しく自覚される年だと思いますが、みなさまの御気もちはどんなでしょう。もう、これ以上ひどくなっては、やりきれない。実際だれでも、そこまで来ました。
 たとえば、どこのお母さんでも、お子さんの学校の問題には頭をなやましておいでです。六・三制になって、校舎がない、教科書が足りない、という声は三年越しです。小学校の課目に社会科という科が出来ました。社会科の時間に、子供たちの輿論調査が行われました。学校生活で一番希望されていることは、学用品・運動靴の配給や、給食をもっとほしい、ということです、子供達が住んでいる町にのぞんでいる第一のことは、遊ぶところをつくってほしい、というねがいです。物をもっとやすくしてほしいという答もあります。家庭生活では、先ず米を沢山配給してもらいたい、が筆頭で、燃料・
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