八年の生涯をモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]で終ったことは、世界に少なからぬ感動をつたえた。ゴーリキイをしてしかく人類的な光彩ある活動と、才能の満開とを可能ならしめた社会の文化的条件を想い、翻ってその招来のためにゴーリキイが作家的出発の当初から共に労して来た歴史の推進力との相互的関係に思い潜めて、それぞれの国における歴史と文化との季節について考えたのは、ただ深い泥濘の中を歩いている日本の作家のみではなかったであろう。
 十七年振りでアメリカから帰朝した佐藤俊子氏が、十七年留守をしていたということから生じた却って一種の清純さ、若々しさでアメリカにおける日本移民、第二世の生活を「小さき歩み」に進歩的な目で描いたのは興味あることであった。
 国際ペンクラブ第十四回大会は、この年九月五日から十日間、アルゼンチン首府、ブェノスアイレスに開催され、日本からはじめて島崎藤村、有島生馬の二氏が代表として出席した。大会は、国際事情の複雑な背景を負うた。同じ六月ロンドンで第二回会議を持った国際文化擁護国際作家会議は、各国文化を脅しつつある「反合理的・反科学的エモーショナリズム」への抗議と、人間
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