かった創造的な精神が、通俗小説となって発展し、その反対の日記を書く随筆趣味が純文学となって」身辺を描き私を描きつづけ、「可能の世界の創造」を忘れ「物語を構成する小説本来の本格的なリアリズムの発展」を阻害した、と観察された。そして、従来、純文学と通俗小説との区別のために重要なモメントとされて来た文学的現実内における偶然と必然という問題を、次のように解決しようとした。
人間を描くには、「人間の外部にあらわれた行為だけでは人間でなく、内部の思考のみも人間でないなら、その外部と内部との中間に[#「その外部と内部との中間に」に傍点]、最も重心を置かねばならぬのは、これは作家必然の態度であろう。けれども、その中間の重心に[#「その中間の重心に」に傍点]、自意識という介在物があって[#「自意識という介在物があって」に傍点]、人間の外部と内部とを引裂いている[#「人間の外部と内部とを引裂いている」に傍点]かの如き働きをなしつつ、恰も人間の活動をしてそれが全く偶然的に、突発的に起って来るかの如き観を呈せしめている近代人というものは、まことに通俗小説内における偶然の頻発と同様に、われわれにとって興味溢れ
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