して一般に迎えられたばかりでなく、プロレタリア文学の公式主義[#「公式主義」に傍点]との中間に立って知識階級の文学[#「知識階級の文学」に傍点]を確立しようと欲するインテリゲンツィアの心持をつよく魅した本来の矛盾の姿のまま、時代の波瀾にもまれ、やがて矢継早な変転の道を辿らざるを得なかったのである。
プロレタリア文学団体は、この年の二月解消の余儀なきに至ったが、『文化集団』、ナウカ社から発行されていた『文学評論』等は、相当の活気をもって、大衆の生活から湧き上る文学的要求を満たす力を有していた。当時の微妙な情勢は、従来のプロレタリア文学の専門技術家の多数がその生活態度と文学との上に拠りどころを失って、批判の欠けた文学をつくり出し、所謂文壇の拍手の高低によって心持を左右されることの少くないようなのに対して、一般民衆の裡にあるプロレタリア文学の質的差異に関する判断は、素朴ながら或る意味での健康性を保っていた。然しながら、発展した内容と表現とで自分たちの生活、その希望と苦痛とを作品化してゆこうとする意志をもつ作家たちの間にも、例えば技術の問題などが、模索を伴い、評価のぐらつきを伴いながら考慮さ
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