今日の文学の鳥瞰図
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)横《よこた》わっている
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)文芸懇話会賞等々|夥《おびただ》しい賞が懸けられ
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九三七年四月〕
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本年の建国祭を期して文化勲章というものが制定された。これは人も知る如く日本で始めてのことである。早速絵では竹内栖鳳や横山大観がその文化勲章を授与され、科学方面でも本多博士その他が比較的困難なく選ばれた。文学の分野に於ては、まだこの勲章を授与された作家がない。これは、非常に興味ある点であると思う。何故なら、どこの国でも文化のことが言われる場合、科学の方面と文学の面とは常に車の両輪のように考えられて来ているし、知識人の日常生活の文化を内容づけているものの比率から言っても、文学は重大な一半を占めているのであって、実際に即して見れば、今日の少なからぬ人々が、絵の展覧会は観にゆかないけれども、小説は読んでいるという状態でさえあるだろうと思う。現代の小説家に、果して絵画に於ける
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