今日作家が、その歴史的であるべき覚悟の表現においていよいよ勁《つよ》く文学的であるよりも一般化してしまう傾きを示しているという事実は、私たちの関心を十分そこに沈潜させる価値をもつ現象だと思う。何故なら、今転換期と称されている時期は非常に永い見とおしで日本の社会と文学との将来に横たわっているのであるから。

          二

 社会生活が刻々に変化している。そのなかで作家が変らないというようなことは現実にあり得ない。今日の日本の特徴的な相貌としては、云わば自然なそういう作家の変りかたにおいて、作家の変ることが語られているのではなくて、たとえばこれまではシャボテンであったがこれからは蘇鉄でなければならないと、銘仙から金糸でも抜くことのように云われ勝なところに、沢山の問題と作家にとって具体的な困難の多くが畳みこまれていると思う。
 作家が文学の仕事の中で変るという場合、それはどんなことを意味するのだろう。一人の作家が変った、ということは、いつも一人の作家が成長したということと同じではないという事実を、どこまで心にだきしめて、変るということが云われているのだろう。
 文学に携わるもの
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