今日の文学の諸相
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)勁《つよ》く
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四〇年十一月―十二月〕
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一
年の瀬という表現を十二月という歳末の感情に結びつけて感じると、今年は年の瀬を越すなどというものではなく、年の瀬が恐ろしくひろい幅とひどい勢いでどうどうと生活もろとも轟き流れている気がする。一年の終りの月というしめくくりの気分なんかどこにもない。いろいろな事象がそれ自身の収拾つかない課題の生々しい断面をむき出しながら、益々幅と量とをましながら奔流しつつ十二月が来ている。
日々の生活感情がそのようだし、十二月号の雑誌をいくつか見ると、従来なら吉例的にたとえ外面からのことは承知でも何か一年の総括めいた空気を盛っていたものが、今年の十二月号には、あらゆる面で、ものごとの渾沌としたはじまりの動きばかりが強く反映していることも実に意味ふかく思われる。
去年の暮、文学の分野に関しては、ともかく或る概括が諸家によってされていた。その前年からルポルタージュ
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