持っていないから、事実においてそういう雑誌でも売れて行く必然性がある。売れるからますます多く作り、安いからますます読んで、自分たちの汗水たらしてとった金を払って自分たちをますます狭い低い隷属的な生活へ追い込む文化の影響を受けて行くという状態にあるのである。
読者は今度国定教科書の插絵が大変かわったことに気づいていられるだろうか? 先の教科書では、洋服を着、靴をはいて画かれていた小学生の姿が、改正されたものでは、和服で藁草履をはいている。これは何故であろうか? ある人はこれを説明して、「もとの絵は都会の生活を主にして画かれていた。あれを見て、農民はいたずらに虚栄心をあおられる。実際に農村で子供たちがしているような服装をした子供の絵の方が、質実な思想を養うに有効である。」といった。
この説明は、実際の一面のみにふれている。插絵の変更の他の一面にはゴム靴の買えなくなった農村の子供とその親とにこの貧困の状態を普通のものと思わせようとする効果が考慮されてあることは何人の眼にもあきらかである。
農村の文化の特性というものが、強調され、農村の文化を創るものは農民である、という農本主義的の考え方
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