lの職業補導としての成人教育も殆ど行われていない。浮浪児の再教育は現在の段階ではその必要の千分の一にも及んでいない。当局はこれらの子供の教育と収監との間にある本質的な区別を理解していないようである。このことは生活難から売笑婦になった若い娘の再教育の場合についてもいわれる。日本のこの種の再教育がいつも冷酷であり囚人扱いであり、従って効果をあげないのは日本の封建的なまた儒教的な形式道徳観が、指導者の心情に残っているからである。
 自由大学 一九四六年以来各大学、専門学校などではさまざまの形で自由大学を開いた。東大、早稲田、慶応その他の大学が学生と教授の協力によって一般の聴講者を集めて政経、文学、美術、自然科学、技術等についての連続講演を行った。夏期休暇中帰省する学生、教師などと協力して各地方でも夏期大学や農村講座がもたれた。労働組合では、特に婦人部を中心とした啓蒙的な講演会をしばしば持ち、各学校も中等学校をはじめとして校外から講師を招いて文化的講演会を催した。
 民主的な専門研究団体は自身の連続講座または公開研究会を開いている。この数は非常に多い。そして学問上の利益も少くない。

    
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