@   2 国字・国語

 日本の国字の問題は従来使われていた漢字をどのように制限して簡単な文字を使った文章を書けるようにするかという点にある。漢字を覚えるために義務教育の多くの時間がついやされてきた。従来、天皇が発表するすべての文書はもっともむずかしい漢字を使って書かれ、普通の教養をもった者では読めない文章によって書かれていた。このことは古代の中国人が漢字で文盲の民衆を支配してきたのと同じ効果を絶対主義下の日本人民に与えてきた。思想は支配権力に属し、その表現は何時も半分は神秘的な感じで行われてきた。日本は、その野蛮さからぬけなければならない。一般人が社会生活を営み言葉をもって自分の意志を表明している以上、そのままの文章が役に立つような民主化が行われなければならない。一九四七年に新聞その他に使用される漢字が制限された(四六年十一月五日文部省国語審議会総会)。
 日本語は漢字のほかに、複雑な仮名づかいをもっている。書かれている仮名文字と発音とが別々で、書かれている字の通りに読んだのでは意味が分らない場合が少くなかった。たとえば「蝶々」という仮名は、「てふてふ」と書かれた。それだのにこの「
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