オた。日傭労働は一日二五〇円であったから。
新制中学における学生の代用教員が、やはり同じように教員の生活の脅威となったことについて悲しんでいる。彼等は文相がどんなに学生の政治的意識を打破しようとしていても、このような彼らの日々の経験から深い社会教育を受けつつある。すべての学生は、学生生活の危機がとりもなおさず広汎な勤労人民の生活危機であることを自覚した。学生たちは学校の門とヤミ商売の門とをきわめて近い距離において発見した。したがって、これらの若い良心が資本主義社会のモラルについて、辛辣なそして真実な批判をもっていることは当然である。
経済的困難から退学した学生たちは、たいてい数人の家族をかかえて悪戦苦闘している。次のような手紙の一節は無限の訴えをもっている。「国家の大学が国家の名において文科系学生のみを戦線に配置した、そのあと始末を全く省りみないのは、矛盾ではなかろうかと思います。我々はあの当時どんなに無限の感慨をもってあの時計台をふりかえりふりかえり屠所にひかれて行ったでしょう」。今日の働かなければならない学生たちは、はっきりと「働きながら学べる大学」を求めている。そしてこの希望
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