トいる。東大の職業を求めている学生の三六パーセントは、肉体労働をもいとわぬとしている。女子学生は、知的労働のほかに進駐軍女子寄宿舎の徹夜夜警、洗濯婦等に働くほか、街の小工場の臨時女工として家内的な工業に働いたりしている。学生たちが苦痛とするところは、これらの労働が安定性をもたないことである。半年以上つづく可能性があり、それによって学生の精神的安定も保たれる労働をみつけているものは全体の五〇パーセントにすぎない。
男女学生は、自分たちの労働の必要を安価な労働力として利用しようとする政府の方針に抗議している。たとえば、一九四七年の十月末に、逓信省は東大に一五〇名以上何人でも働きたい学生を要求してきた。四時間労働で三〇円、中央郵便局における事務という名目であった。学生たちは午後四時から四時間労働で三〇円とるということに誘われて応募した。そしたらば、一日おいて全逓のワイルド・キャットが始った。学生たちは非常におどろいた。彼等は自分たちが労働者の生活権侵害者になったことを恥じた。そして政府の目的を発見したのであった。さらに学生たちは、四時間三〇円という賃銀が労働力のダンピングであったことも発見
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