潟Jの娯楽放送プログラムを模倣している。「二十の扉」のように好評をうけているものもある。しかし音楽放送における軽音楽、流行歌等のプログラムは相変らず大衆の趣味の最低水準に追随する傾向がある。映画会社とレコード会社の影響から自由になって、軍歌ばかりをつぎこまれていた日本人の歌のこころに、新しい瑞々しい歌と舞踊のメロディーが送られることを、一般聴取者は希望している。「名曲鑑賞」は、レコードを焼失した日本の洋楽愛好家にとって愛されているプログラムの一つである。
 勤労者および農村に送るプログラムは、昨今質の低下に苦しんでいる。一九四六年に、農村むけ放送プログラム編成のために民主的な農業問題専門家による小委員会がつくられていた。ところが政府の農業政策が、農村の現実と齟齬《そご》する程度が増すにつれてこの委員会の活動は不活溌にされ、現在は解体している。勤労者の生活不安が切迫しており、勤労者の自主的な生産復興が阻害されているとき、真面目な勤労者は彼等の努力と現実にふれない空虚なプログラムを愛しにくいことは自然である。
 日本人民は戦争中短波放送の受信を禁止された。短波受信機は警察によって調査され使
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