ェ吹きはじめている。
反戦的な文学 一九四七年の後半になって、やっと少しずつ日本の侵略戦争に対する批判を表現した文学作品があらわれはじめた。
梅崎春生の小説「日の果て」はいくらか通俗小説の傾向があるが、脱走兵のあわれな最後を克明に描いている。宮内寒彌の小説「艦隊葬送曲」、「憂うつなる水兵」等は、報道班員丹羽文雄の「海戦」には描かれなかった水兵の運命を描いた。野間宏の「二九号」は、軍事刑務所の生活を描いた。民主主義文学運動に参加している文学グループの中から新しく小説を書き出している若い人々の中から、短篇であるが「古川一等兵の死」のような兵士の悲惨な運命を描いた作品もあらわれた。
東大の学生が編輯した東大戦歿学生の書簡集『はるかなる山河に』一巻は、文学作品ではないが、深い感銘を読者に与える。日本の軍部は前線から故郷に送る兵士の手紙をすべて検閲した。軍機の秘密に属さないことでも、前線の生活事情と強いられた環境の中での心もちとを率直にあらわした手紙は許可しなかった。明日は戦死しなければならない前夜に、許されて手紙を書くときでさえも、日本の兵士たちは、「滅私奉公します」と書いた。あわれなこ
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