フ事情の中から、軍隊内でやや階級のよかった若い学徒兵士が、いくらか人間的な心情を家族や友人に伝えることが出来た。『はるかなる山河に』は、昨今流行している第三次世界戦争への挑発に対して、きびしい抗議の一つとして存在している。
外国文学 日本在住の朝鮮人作家が『民主朝鮮』という雑誌をもっている。過去の朝鮮人作家で日本語の書けた人は、舞踊におけるサイ・ショウキのように自分の民族性を売りものにした。しかし日本語で小説を書いている進歩的な朝鮮人作家は、民族と自立と解放の線に立って創作している。
戦争中日本の読者は、外国文学に接する機会を奪われていた。ナチス文学が僅かに輸入されただけであった。ファシズムとナチズムの侵略に対して、フランスその他の国の人々がどのように戦い、誇りある民族の文化を守りつつあったかということは知らされなかった。アメリカの国内で民主的な力は、どのように結集してファシズムと対抗しつつあるかということを知らされなかった。日本へ帰って住むようになったアメリカ通[#「アメリカ通」に傍点]の人々は鶴見祐輔をはじめむしろアメリカを誹謗した。
一九四五年以後の日本のすべての読者は、新
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