今日の女流作家と時代との交渉を論ず
宮本百合子

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)屡々《しばしば》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九二二年五―六月〕
−−

          一

 女性からどうしてよい芸術が生れ難いか、またこれまで多く女性によって発表された作品に、どうして時代との交渉が少なかったかというような問題に対して、私は先ず第一に文芸の本質たる個人の成長ということを考てみたいと思います。私は物を見る時に、必ず個人という観念を基礎にして物を見ます。その物を見究めることに於いて、個人としての女、個人としての男に就いていうならば、その生活上に於ける色々の意味から、個人としての女の方に、ヨリ多くの欠陥が見出されます。
 今、女の立場からその個人の成長に就いていえば、――それは当然私自身のことですが、私の小さかった時代には、反って或る一種の反抗心が私に仕事をさせたものです。そしてそれは可なり純なものではあったものの、同時に単調であったに違いありません。尤も今日に於いてもそれは依然として存在していますが、それ
次へ
全9ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング