もしないも自分の誠心一つではあるが、この真の時代と混和した心持こそ、初めてその時代を知るものに外なりません。この大切な事柄さえも女性にとっては、その自由が阻止され勝ちです。
 なお最後に女の自由は、その子供のうちは比較的解放されているが、十八九位になると、全く男と違った生活を強いられます。今の時代に於いては「お前のすることは全部お前に委かせるから、責任を持っておやりなさい」というのではなく、娘は「どこそこのお嬢さん」というものとして取扱われ、親の作った輪の中に閉じ込められているのであって、真の解放や自由は与えられていないのが多くはありますまいか。娘から妻になる場合、それも多く親が結婚させて呉れる、そこに自由がない、個性がない、男の人の経験する「恋愛模索時代」というものが少ない。即ち信じたり疑ったりする経験を持つ時代が女には乏しくなり、従ってそのために熱も欠けようといった有様です。
 男は良人になり、父になり、益々その責任が強くなる。また社会人としても、その経験が広く深くなります。女は多くの場合、家庭内の生活に堕し、社会的関係がないから其まま納まってしまうが。娘時代から結婚時代へ、妻、母
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