く、赤く焔の音がひどかったことでしょう。本当にどんなにあつかったでしょう、うちの火でさえ風はあつくなりましたもの。
十八日には面会が出来るという張り出しを七八人のみんな歩いて来た連中が眺めました。体が乾きあがる感じにおあつかったのだろうと思います。
こういう場合を予想しなくはなくて、それでも、無事にしのげて、うれしく、うれしく思えます。まだこれから先のことがどっさり在るにしろわたしたちはやっぱり距離にかかわらず、手をつないで火でも水でもかきくぐり、そして清風を面にうけるのであるという確信をつよめます。うちの方は、団子坂からこちらまでがのこって居ります、その前側も。学校側は竹垣一つです。あと焼跡。ですからこんどは逃げる場所は到ってひろくなりました、広いわ、実に実にひろうございます。
縦の第一列になりましたから、こんどはこちらへ落ちるでしょう。その点いよいよ油断出来ませんが、同時に安全度もまして、面白いものです。
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[自注11]あの空襲――四月十三日百合子が一人留守番していた駒込林町の弟の家の周辺が空襲をうけた。竹垣の外の細い道の隣までやけて家は残った。この前
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