で光が不足している上、だだ広くて、ちっとも落付かず食堂でばかり暮しました。コタツがある故もあって。冬の中は、ね。
 ところが、この節のうちの暮しは、雑多な人々が出入りして、食堂で食事いたします。小机一つひかえていても、室の空気というか、床《ゆか》というか、人々の気配で揉まれていて、そこにいることは疲れます。
 暖くなって来たし、光線の工合もいいので、同じ二階ながら、北向きの長四帖に机と椅子と紫檀の飾棚だけをもちこんで、きょうは部屋つくりいたしました。
 この、よく働いた大テーブルに向って物を書くのは、もう三四年ぶりです、十六年の十二月九日以来よ。病気あがりの時は体の力がとぼしくて、こんな大きい机にとりつく元気がなかったし、去年の四月以来は、家政婦暮しで寸暇なく、やっとこの頃すこし自分のひまが出来はじめ、体も丈夫さが増して来て、この机がうれしくなつかしくなって来たわけです。
 この頃は、実に早寝です、十時までには床につきます。そのためか、よほど疲れが直り、又いくらか平穏なので、大助り。この北の小部屋は、短い手すりのついた(あなたが、夏、長椅子代りになさったような)はり出しがついていていき
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