と、その原稿を再生させて、駅売りパンフレットをこしらえて、幾人かの男が生計を営んでいたのでした。森長さんに、もし分ったらば教えていただくようたのみました。駅売りパンフレットも紙なしでもう駄目でしょう。しかし速記者はやはり其で生活してゆくのでしょうから。
銀座がやけてはじめて通りました。実に変りました。御木本もなくなったし、われらのエンプレスが支那料理やになっていたのもないし、めがねやの金田も、焼けて居ります、尾張町から日比谷へ(新宿行で)向うところ、強制疎開の家屋破壊で大変だし、麹町の通りも、新宿も。こわされている家屋を見ると、本当にこわすべきと思います。もろくて、燃《た》きつけ以外ではないのですもの。そして、団子坂下あたりの店のこわされているのと、日比谷あたり麹町あたり、同じ細くやにっこい内部の組立てを露出しているのには、つよく感じを動かされます。近代都市ということは不可能な建造物です、この前の震災の後、都市計画というものを立て直し、何本かのひろい道は出来ましたが、しかし家屋については、実に惰力的態度だったのねえ。近代生活の感覚が市民の日常に入っていないし、経済力も近代都市化し得な
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