をしてのんきなのは私一人だけでないことを知っているというわけです。
 三※[#濁点付き小書き片仮名カ、517−17]日だったかの新聞に衣料疎開七日迄受つけとよんで、開成山へふとん類を送ってやったのです。一人ですっかり菰をかけるだけにしたから、へばりよ。荷作りも随分やって上達いたしました。姉なんかというものは妙なものね。こんなに骨を折って、やっぱり皆が助かるだろうとそんなものを送ったりして。別にたのまれもしないのに。
 八日のお手紙、あんなに寒そうにしていらっしゃるのに、こうしてお手紙よむと、ちっともそんな風に思えず、一層沁々と拝見いたします。健気であればある丈いじらしくいとしいという心もちは、母だけがもつ心もちではないと思います。今年の正月は、全くわたしもすがすがしい気分が主潮をなしていて、清朗であり、そこに光りもとおして居りますけれど、思えば思えば御苦労さま、というところもひとしおで、そのすがすがしい清朗さに、云うに云えないニュアンスを優しく愁わしく添えて居ります。こんな風にして、わたしたちの清朗さも、単に穢れなき浄潔から益※[#二の字点、1−2−22]人間的滋味を加え、わたしたちの
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